ワクチン・予防
感染症予防の徹底を

予防医療は、健康を維持し病気を未然に防ぐことを目的とします。
生活習慣の改善や、健康診断による病気の早期発見・早期治療とともに、感染症の予防もとても重要です。
犬は4大予防、猫は3大予防の徹底をおすすめしています。
犬の4大予防
- 狂犬病予防注射
- 混合ワクチン
- フィラリア予防
- ノミ、マダニ予防
猫の3大予防
- 混合ワクチン
- フィラリア予防
- ノミ、マダニ予防
ワクチン接種
ワクチン接種は感染症に対する免疫を得るために重要です。
世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインでは、ワクチンをコアワクチンとノンコアワクチンに分類し、接種プログラムについての指針を定めています。
コアワクチン
すべての犬と猫が接種すべきワクチン
どのような環境でも、接種しないリスクが接種するリスクよりも高いと考えられるワクチンです。接種した動物だけでなく、集団免疫の観点から周囲の動物全体を守るためにも接種が必要です。
ノンコアワクチン
地域やライフスタイルによって感染のリスクがある場合に接種すべきワクチン
接種するかどうかは個々に判断が必要となるため、獣医師とご相談ください。
※接種プログラムは現在も議論されているため、科学的なエビデンスに基づき今後も改訂される可能性があります。また、国内で入手可能なワクチン製剤は限られているため、WSAVAのプログラムの通りに接種できないこともあります。
※コアワクチンに関しては、抗体価検査を実施して、抗体価が下がったときに接種するという方法もあります。詳しくは獣医師にご相談ください。
ワクチンのリスクについて

ワクチン接種のリスクを考えるときに、最も重要なのが副反応です。副反応には急性のものと慢性のものがあります。種類や頻度は犬と猫で異なりますが、多くの場合、犬では接種後12時間以内に、猫では24時間以内に急性の副反応が認められます。ワクチン接種から丸1日程度は安静にし、頻繁にようすをみていただくようお願いいたします。
過去に副反応が認められた子は…
副反応の程度など予測される“接種するリスク”と、感染症に感染するかもしれない“接種しないリスク”とを比較して、接種するかどうか判断する必要があります。判断に迷われる場合は、獣医師にご相談ください。
代表的な副反応
- 元気・食欲消失
- 顔面腫脹(特に犬)
- 発熱(特に猫)
- 嘔吐
- 蕁麻疹
- 接種部位の疼痛など
特に注意が必要な副反応
アナフィラキシーショック
急速に全身的なアレルギー反応が起きた状態です。血圧の低下など重篤な症状で命に関わります。接種後20分以内に起きることが多いため、ワクチン接種直後は院内もしくはお車の中で安静にして待機していただくようにお伝えしています。
猫注射部位肉腫
猫で、ワクチンや薬剤の注射をした部位に発生する悪性腫瘍です。発生の頻度はおよそ5,000~10,000頭に1頭程度とされていますが、進行が早く治療が困難な場合もあるため、注射部位にしこりができていないかどうかご自宅で注意して観察していただくようお伝えしています。また、もし腫瘍ができてしまったときに切除手術ができるように、四肢への接種が推奨されています。当院ではワクチンは後肢に接種しています。
犬のワクチン

混合ワクチン
一度の接種で複数の感染症への予防が可能です。
(レプトスピラは、人獣共通感染症であり、犬が感染した場合はそのご家族や動物病院スタッフにも感染のリスクがあります。2024年のガイドラインの改定では、流行地域においてコアワクチンとして扱われることになりました。)
予防できる伝染病
コアワクチン
- 犬ジステンパーウイルス
- 犬アデノウイルス2型
- 犬パルボウイルス
ノンコアワクチン
- 犬パラインフルエンザウイルス
- レプトスピラ インテロガンス(2種または4種)
- 犬コロナウイルス
猫のワクチン

混合ワクチン
一度の接種で複数の感染症への予防が可能です。
(猫白血病ウイルスは、感染の急性期を経て持続感染に進行すると、血液の悪性腫瘍を発症し、治療が困難となります。
2024年のガイドラインの改定では、流行地域において1歳未満の幼若期の猫のコアワクチンとして扱われることになりました。)
予防できる伝染病
コアワクチン
- 猫汎白血球減少症ウイルス(猫パルボウイルス)
- 猫伝染性鼻気管炎ウイルス(猫ヘルペスウイルス)
- 猫カリシウイルス
ノンコアワクチン
- 猫白血病ウイルス
- 猫クラミジア
フィラリア感染症予防
フィラリア感染症とは

フィラリア症は、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が犬の心臓の肺動脈に寄生して起きる病気です。フィラリアは、感染している犬から蚊を媒介して他の犬に感染します。皮下に感染したフィラリアの幼虫は、成長すると血管から心臓に移動します。心臓で成虫に成長すると、右心不全やベナケバ症候群などさまざまな病態を引き起こします。蚊に刺されてから成虫に成長するまでは約6~7か月かかります。重篤な症状や、後遺症が残ることもあるため、予防をしっかりとすることがとても大切です。
猫のフィラリア

フィラリアはイヌ科動物以外にも感染することがあり、猫やフェレットにも感染することが知られています。猫に感染すると、少数の寄生でも犬糸状虫随伴呼吸器疾患と呼ばれる喘息に似た重篤な呼吸器症状を引き起こします。
診断が難しく、また、一度感染すると完治することがないため、しっかりと予防することが重要です。
フィラリア予防薬

フィラリア予防薬は、厳密には予防ではなく、感染した幼虫を駆虫する薬です。薬が最もよく効くのは、フィラリアの幼虫の中でも感染直後の第3期幼虫(L3)から、第4期幼虫(L4)と呼ばれる期間の間です。L4の期間は感染数日後から1~2か月の間なので、予防薬は、蚊が出始めて1ヶ月以内に開始し、蚊がいなくなってから1ヶ月後まで毎月投与を続ける必要があります。
群馬県では、5月下旬から12月までの投薬をおすすめしています。また、国際ガイドラインでは通年投与が推奨されているため、通年投与もご検討ください。
体重の変動がない成犬は、予防期間中のお薬をまとめて処方することもできます。

※成犬のフィラリア予防開始時には、安全のため必ず血液検査を実施して、フィラリアの感染の有無を調べます。
万が一、フィラリアに感染している犬にフィラリア予防薬を投与してしまうと、大量の幼虫が血液の中で死滅することでショックなどを引き起こし、命に関わる危険性があるためです。
検査は、フィラリア成虫の抗原を検出するため、検査日から約6か月前までの感染しか検出できません。
前年の夏以降の感染を検出するためには、予防開始直前の4~5月に検査をする必要があります。
ノミ・マダニの予防
ノミ

ノミは体表に寄生して犬・猫の血液を吸います。また、吸血の際に感染症を媒介することがあります。
吸血したノミの成虫は、24~48時間以内に卵を産みます。卵は畳やカーペットなど部屋の中で数日以内に孵化して幼虫が生まれ、その後1~2週間でサナギに成長します。サナギは1週間程度で成虫になります。最短2種間ほどで卵から成虫になり、また動物へ寄生して繁殖を繰り返すため、あっという間に増殖してしまうのです。また、ノミは気温が13℃以上あると活動できるため、冬でも室内ではそのライフサイクルが成立します。
もし動物の体表にノミの成虫を5匹見つけたら、生活する部屋には95匹の卵・幼虫・サナギがいるといわれています。そのため、ノミに寄生された場合は、その動物の駆虫だけでなく、生活環境中のノミの駆除も行わないと完全な駆虫はできません。部屋の中でノミの繁殖をさせないためには、動物の予防をすることが重要です。
ノミによる被害の例
貧血・ノミアレルギー性皮膚炎・感染症の媒介(※)
※感染症
瓜実条虫、ヘモプラズマ、猫ひっかき病など
マダニ

マダニは、動物へ寄生し数日間吸血すると落下し、脱皮をして成長します。幼ダニ・若ダニ・成ダニとそれぞれの成長段階で同様のことを繰り返すため、複数の動物に寄生することで病原体を媒介することになります。また、成ダニは吸血後落下して産卵しますが、多くの病原体は卵を介しても伝播されるため、感染症はさらに広がっていくことになります。マダニが媒介する病気には、人・犬・猫それぞれで命に関わる病気が含まれるため、ダニの吸血とともに病原体の伝播を予防することがとても重要です。
※もしも動物がマダニに刺されてしまっているのを発見しても指でつまんで取ることはやめましょう。マダニはくちばしを皮膚に突き刺しているため、くちばしを皮膚の中に残さないように取り除く必要があります。
マダニによる被害の例
貧血・皮膚炎・感染症の媒介(※)
※感染症
犬:犬バベシア症、へパトゾーン症、エールリヒア症、ライム病、SFTSなど
猫:猫ヘモプラズマ感染症、SFTSなど
人:SFTS、ライム病、野兎病、日本紅斑熱など
